◆アスピリン

暗雲

アスピリンというと、頭痛、生理痛の解熱鎮痛剤のイメージが強い。っていうより、戦後しばらくは風邪薬として一般家庭に定着していたように思う。風邪にはアスピリン、ちょっとした怪我には赤チン、メンソレータム、下痢には正露丸、咬み刺されにはキンカン、整腸剤にはワカマツ、この辺りが家庭常備薬として整備されていた。ところが一部を残して、こうした常備薬はいつのまにか消えてしまった。特にアスピリンなどは副作用があるからって理由で家庭から遠ざかって行った。

アスピリン、実はリューマチ治療、心筋梗塞狭心症脳梗塞の再発防止薬として、中高年に広く使われている。この薬は血管内に血栓を作りにくくする作用があり、2000年から心筋梗塞脳梗塞などの再発防止剤として保険適用され、医師による安易な調剤が急増している。ところが、その一方で、アスピリン常用者は一度出血すると止血が難しくなることから、50代以上の中高年で、胃から出血、突然吐血や下血が起き、胃壁に穴が開く胃潰瘍が頻発しているという。その病名は「アスピリン潰瘍」といい、低用量のアスピリンを常用しているだけで、健康な人に比べて2倍のリスク、他の抗炎症薬を併用すると、リスクは9倍に跳ね上がる。

以上は愛読しているタブロイド紙日刊ゲンダイ」の記事である。この新聞、どちらかというと、エロイ、オフザケ、ゲバイといった記事が多いんだが、大新聞では報じられない現政権に対する八つ当たりの論調が、他紙には見られない激烈さがあって、痛快極まりない。それとともに、どういうわけか妙に医療欄が充実しているのが面白い。

なんで、突然思いもかけない胃潰瘍に遭遇したのか、この記事を見てやっと納得したね。アスピリンがそんな大事を引き起こすなんて夢にも思わなかったから、整形外科医に強い抗炎症薬を調合してもらうとき、それまで毎日アスピリンを1錠づつ飲んでいるのを申告しなかった。そして、抗炎症薬を飲み始めて2日目に、胃潰瘍を発症したんだから、アスピリン潰瘍だったことは間違いないね。

この記事を整形外科医に見せたら、思わず絶句してしまったという。それにしても薬の併用が、こんな大事を引き起こすんだから、安易に薬も飲めないし、違う病院で診察を受ける際には、既往の病院で調合された薬のリストを絶対見せるべきだっていうことを、つくづく思い知ったね。