◆アカシア

豊洲ららぽーと

雨の歌ってけっこう多いね。歌謡曲の定番、港、涙、恋、別れに次ぐくらいの出番があるようだ。「雨が止んだら お別れしましょう」って菅原洋一が歌い、「雨、雨、降れ、降れ、もっと降れ 私のいい人連れてこい」って八代亜紀が唄い、「小ぬか雨降る 御堂筋 こころ変わりな 夜の庭」って欧陽菲菲も歌う。「雨が続くと 仕事もせずに キャベツばかり かじってた」って、南こうせつが「赤ちょうちん」で謡い、「雨に破れかけた 街角のポスターに 過ぎ去った昔が 静かによみがえる」って、バンバンが「いちご白書をもう一度」で歌う。

「アカシアの雨に打たれて このまま死んでしまいたい」と歌う、「アカシアの雨が止んだとき」は垢抜けたベッピン・西田佐知子が囁きかけるようなハスキーボイスで歌う姿にしびれたもんだが、モダンな曲調なのに、歌詞はものすごく暗くて寂しい。あの曲がヒットしたのはいつごろだっただろうか。ご亭主の関口宏が老境に差し掛かっているくらいだから、かなり昔だったに違いない。1989年にシングル盤が発売されているが、これは再販のはずだから、それより20年ほど前だったか。

4−50年前にアカシアの雨なんて歌がはやったこと自体不思議な気がするね。50年後のいま、だいぶ花に詳しくなったコチトラでさえ、とっさにイメージがわかないくらいだから、花なんかどうでもよかったんだろうなあ。アカシアというしゃれた語感が、パリなど憧れの都市を連想させ、つかのまのエトランゼ気分を味わえればよかったんだろうかなあ。作詞者もそこまで読んで書き込んでいたかどうかは不明だけどね。

パリといえば、アカシア、ミモザマロニエ、パリをはじめヨーロッパ各地の街路樹として有名なマロニエ。フランス映画などにも風景としてよく出てくし、セイヨウトチノキのことだから、日本でもよく見ることができる。ところが、アカシアとかミモザとなると、いまいちピンと来ないよねえ。アカシアは明治時代に輸入されたニセアカシア(ハリエンジュ)を、当時アカシアと称していたことから現在でも混同されることが多い。また、花卉栽培されるフサアカシアなどが、本来はオジギソウを指すミモザの名前で呼ばれている。マロニエは春遅くに上向きに房状の白い花を咲かせ、ギンヨウアカシアは春先、吹きこぼれそうに黄色の花を一杯つけ、ニセアカシアは夏に地味な紡錘状の白い花をつける。