◆カルメ焼き

路地裏

何度やってもうまくいかなかったのが「カルメ焼き」だった。いわゆる駄菓子だったが、家で簡単に作れるという評判が広まり、道具一式を買い揃え、準備万端を整えて臨むのだが、砂糖の焦げるいい匂いを嗅ぐだけで終わってしまう。口悔しくて口悔しくて、縁日があると出かけては、プロがいとも簡単に作るのをじっと見つめたものだった。カルメ焼は直径10cmほど、厚み4−5cmほどの「亀の甲羅」に似た中央が膨らんだ楕円状のお菓子をいい、材料は簡単、水・砂糖・ふくらし粉、そしてお玉・割箸・濡れ雑巾と七輪があればいい。
当時の「テニオハ」を見ると<作り方は単純で、ザラメまたは赤砂糖(三温糖)に少量の水を加え加熱して融かし、重曹を加えて手早くかき混ぜ、炭酸ガスで発泡したところで、冷やしながら軽石状に固めたものである。ただ、砂糖と水の分量や、火から下ろすタイミング次第では失敗することがある。冷やす際には、水に濡らしたタオルの上に形を押し当てながら、溶けた砂糖が発泡状態のまま固まるようにさせる。>とあるが、失敗することがあるどころではない、成功したためしがないんだから、どうしようもない。

なぜ、こんなに熱くなっていたかっていうと、なにせ、甘いもの、特に砂糖なんてものは貴重品だったし、砂糖菓子なんて、滅多に口に入らなかった時代だった。それがわずかのザラメさえあれば簡単に菓子を作れるということが最大の魅力、それがわずかの費用と道具で、家庭で作れちゃうってんだから、たまんないよ。

しばらくして、甘い香りにひかれ、大枚?はたいて、夜店で立派な「カルメ焼き」を買い込み食したが、なんだ、こんなまずいものだったのかってガッカリした思いがある。形は立派だったけど、ガキ相手の商売だから、職人は利潤追求が先で、満足に砂糖を使っていなかったんだ。お菓子屋にいけば、そろそろ砂糖を使った大福だとか、饅頭なんかも買えるようになっていたから、こんなパサパサで口当たりの悪い菓子なんて、通用するわけもなく消えてしまったが、いまでも祭りや縁日の露店などで、見かけることもあるが、懐かしいねとは思うものの、買って食べたいなんて、ゼッタイ思わないね。