◆ゼロ地帯

晴海運河

江東区枝川に移ってきてから10数年になる。それまで都内近郊に住んでいたから、川向うに住むなんてことは夢にも思わなかった。こちらを鬼門と思っていたのは、いくら護岸工事が進んでいるとはいえ、戦後、キテイ台風やジェーン台風など大型台風が襲来すると、江東ゼロメートル地帯は必ずといっていいほど、洪水が溢れ惨状を呈していたからである。こちらに越してきて以来、隅田川が氾濫し、あるいは隅田川や中川、荒川と結ぶ運河が氾濫したっていう事態には遭遇していない。台風が来るたんびに、半ば面白半分で、周囲に張り巡らされた運河の水位をのぞきに行くのだが、いつも期待を裏切られる。

都内を縦断する一級河川は、江東地区では、荒川、隅田川、中川の3川だが、これ等の水位が異常に増水すると、それぞれの支川や運河の河口に設けられた巨大閘門が自動的にシャットアウトされ、一級河川による洪水を防ぐ仕組みになっている。そうすると、当然支川や運河は流れを遮断されるわけだから、水位が上昇することになる。いつも思うことだが、場所によっては地べたの方が川より低い場所もある。当然水はあふれるだろうし、さもなくば下水管などに逆流し地べたに湧き上がってくるだろう。いままで、このような事態に陥ったことがないだけに、どうなるかは大きな関心となる。

この地区は4つの運河で囲まれていて、それぞれが河口または海側に大きな閘門が設けられている。逃げ場を失った4つの川からあふれ出す筈の洪水はいったいどうなるんだろうか。普通に考えれば、水に浮かぶ孤島のような状態になるはずだ。そして、液化現象が始まり、地盤沈下は始まり、建物は倒壊するか、傾くことになるはずだ。大都市計画が進められ、超高層ビルが林立している現状は、果たして地盤沈下を抑える抑止力となるのか、不安は増える一方である。