◆ずれ

ガラスの天井

NHKにはめずらしいナンパな番組「サラリーマン・ネオ」が人気らしい。第1クールは終了してしまったが、アンコールの声が多くて、第2クールが再登場した。NHKの番組とはとても思えない、あまりの奇抜さにドギモを抜かれたものだったが、第2クールはさすがにあの時ほどの衝撃がない。役者同士が慣れっこになっちゃっているから、意外性が少なくなったし、スタッフしかわからない中途半端な楽屋ネタも多い。ま、いずれにせよ、達者な役者と粒ぞろいの美女軍団が勢揃いしているから、見ていて楽しいのは事実だね。美女たちが弾けているのもNHKでは珍しい光景だ。

いっこく堂という腹話術師は口を開かずに、人形にしゃべらせる稀有の芸人だが、最近テレビでは、あまり見かけなくなった。どうしたんだろうね。かれが得意としていたジャンルに同時通訳など、音がずれて伝わるのを、巧みに描写する芸があった。最近地上デジタルを見ることが多くなったが、例えば、NHKの放映を茶の間ではデジタルで、ダイニングではアナログで見ていたとする。すると、同じ画面なのに、デジタルの方がやや遅れて音が届くのに気がつく。つまり音がずれているんだ。

デジタルの方が最新技術なのに、おかしいと思うよね。これって、デジタルは画面をきれいに見せる多くの情報が仕掛けられていることによる。テレビ電波の速さそのものは、放送局から家庭まで変わらないけど、家庭に届ける前に、信号の圧縮と変調という作業をしてから電波に乗せる。家庭のテレビに電波が届いてから画面に出るまで、デジタルテレビの中にある電子回路で信号の復調と復元という作業をする。それぞれに約1秒を要するから、都合2秒ほど遅れることになる。

このずれは、画像や音声が東京から大阪などの拠点局を経て、地域の放送局に行く場合には、二重の作業をするために、さらに遅れが倍近くの4秒になる場合も多い。そのために、デジタル放送では、秒針がある時計の時報は流さない。秒針がある時報はアナログのNHK・教育テレビで、それも正午の時だけしか残っていない。画面の隅に数字で時刻が表示されるのは、あとから数字を打ち込んでいる。だから、秒は厳密にいえば合っていないことになる。