◆スピーカー

カトレア

「コンサートホールで、勝負してみました。872席対1424席、惜敗です」。「国内最大規模の総客数を誇る、東急文化村オーチャードホールで、アコーステック・ウエーブを鳴らしてみました。1階席は1424席、そのうち前872席までは、立派に音が行き渡っていましたが、1階全席すべてに朗々と鳴り響くというわけにはいきませんでした」。音響機器メーカー「BOSE」の逆説的な新聞広告である。その文面からは、音に対して絶対的自信を抱いている自負が垣間見えてくる。「BOSE」といえば、スピーカー製作では日本一の評価を得ているメーカーだ。

ぼくらの時代、オーディオブームだった頃は、三菱のダイヤトーンヤマハの高級スピーカーがいい音が出るとの評判だったが、しょせん高嶺の花で、とてもじゃないが手を出せる代物ではなかった。だから、ランク落ちながら、高出力の製品を探し回ったものだった。むろん、スピーカーは高音、中音、低音に分離されたものを選んだ。凝っていたころは、アンプ、ターンテーブル、チューナー、エコライザー、スピーカーをそれぞれ好みのメーカーを選んで組み合わせたりしていた。

スピーカーが100ワットx2、アンプ100ワットで全ボリュームにすると、家が振動し、棚にある小物が落ちてきたりした。まともに聞こうとすれば、防音装置をつけるか、家人の留守中に聞くか、とにかくまともには聞けなかったから、けっきょくは宝の持ち腐れとなってしまったね。考えてみれば、当時発売されてたダブカセの最高級品でも、せいぜい20ワット、普及品で5〜10ワットが当たり前、っていうより、それで充分聞けたわけだから、かなり無謀な試みではあったね。

スピーカーの基本は磁石の振動で紙を震わせいい音を出すことだが、そのためには巨大化が進み、けっこう場所を取る。そのため、小型軽量化を目指し、竹を使ったものや、流体の水磁石を使ったものなども企画されたが、思ったほどブームにならなかった。縦10センチ、横5センチ、重さ2キロ、出力50ワットというスピーカーも入手したが、音に歪みが出てイマイチだった記憶がある。