◆窓の下

カシワバアジサイ

鬱陶しい梅雨空が続いていて、出かけるのが億劫になる。こんな状態を「卯の花腐し」(うのはなくだし)っていうらしいが、「こじ腐し」とか「こじ殺し」とか言い換えたくなる心境だね。先日痛めた腰が微妙に疼くのを理由にして、ここしばらくは出かけもせずに家に引きこもっている。カビの生えそうな本を読むのも面倒くさいし、転寝ばかりしていては、かえって疲れが倍増する、なんちゃて、実は自分でも呆れるくらい、都度、熟睡しているんだけどね。

寝るのに飽きて、テレビも見るものがないときは、窓際にぼんやり座って、見るともなしに窓の下を眺めている。観察しているっていうと格好いいが、ただ、漫然と見ているだけだから、始末が悪いね。窓の下を鮮やかに彩っていたアジサイの花も、カラカラに枯れてしまって、見苦しい姿をさらしている。こんな曇っていて、いまにもポツンと降り出そうな天気なのに、マニアがいるらしく、トイメンの団地から勢いよくフトンを叩いている音が聞こえる。姿は見えないが、物好きな人もいるもんだねえ。さぞかし、せわしい思いをしているんだろうけど、他人の趣味の問題だからなあ。

若い人たちのにぎやかな話し声が聞こえてきた。お昼の時間だ。この周辺に少しばかり点在する、弁当屋、コンビニ、定食屋、蕎麦屋を召さして歩を進めている。往復する声が圧倒しているのは、買い込んだ弁当を事務所に持ち込んで食べるらしい。バイクの音って、なんで、あんなにうるさいんだろう。音が上に昇ってくるってこともあるんだろうけど、マフラーを外したり、不正な改造をしているに違いない。夕方ほど、騒音が激しくなるのは、この周辺に住む高校生がたむろして、それぞれのバイクを持ち寄り、試し乗りしているからだ。女の子が混じると騒ぎは一層ひどくなる。

風呂場から真っ裸のまんま、ベランダに突入する習慣が未だに続いているが、最近はちょっと注意をするようになった。こんな真夜中なのに、眼下の道路端に高校生たちがたむろしてダベっている。男同士なのに、よくしゃべることがあるって、あきれるほど、ぺちゃくっている。うるさくてかなわないが、かれらはフト上を見上げたら、恍惚老人が真夜中に裸踊りをしているように見える筈だからね。熱い風呂はダメ、長湯はダメ、その上ベランダで裸もダメときちゃ、数少ない楽しみが、また老兵から「消え去るのみ」ってことになる。