◆タラバガニ

築地市場

ロシア農業省は先月末、密漁防止と資源保護を理由にロシア領海と大陸棚海域で水揚げされた生きたカニの輸出を禁止したと発表した。ロシアから大量のカニを輸入している日本が影響を受けることは免れない。ロシアの専門家はタラバガニの漁獲そのものの禁止の可能性も検討しているという。日本海オホーツク海ではカニの密漁、密輸が常態化しており、特にタラバガニ資源の枯渇は深刻だ。

国連食糧農業機関(FAO)は先月末、日本国内で消費するウナギの半分を占める欧州産ウナギを野生動植物の国際取引を規制する「ワシントン条約」の対象に加える方針を決めた。同条約の対象になれば取引が厳しく制限されることからウナギの価格高騰につながる恐れが出てきた。日本は世界有数のウナギ消費国で、欧州産も中国で加工するなどして輸入している。欧州のウナギは乱獲によって20年前の2%程度に減り、絶滅の危機にひんしている。

タラバガニ(鱈場蟹)は、エビ目(十脚目)・ヤドカリ下目・タラバガニ科に分類される甲殻類の一種。食用に珍重され、分布域の沿岸では重要な水産資源の一つとなる。名前に「カニ」とあるがヤドカリの仲間で、カニ類は足が10本あるが、タラバはハサミ2本と足6本の合計8本しかない。和名は生息域がタラの漁場と重なることに由来している。カニ缶と言えば、タラバガニが一番おいしいとされているなんて、なんとも皮肉なお話なのである。

カニ缶に入っている半透明の薄い紙は、カニと缶の成分の化学変化で起きるカニ肉の変色を防ぐ役目を果たすそうだ。カニ肉が缶の材料の鉄に触れると、肉の表面にゴマのような黒い点ができて、見た目が悪くなっちゃう。だから缶と肉を紙で仕切って、直接くっつかないようにしてある。蟹工船という言葉があるように、かつては海上で水揚げされたカニを加工していたが、現在はカニ資源保護のために禁止されて、缶詰工場で缶詰加工がされている。