◆老獪

月見草

楽天のスーパールーキー、田中将大投手(18)が13日の中日戦(フルスタ宮城)で、プロ初完封で4勝目を挙げた。0−0の均衡が八回まで続くなか、プロ入り後最多の150球、生涯最速の151キロをマークと、初体験ずくめの完封ショー。野村克也監督(71)には西本幸雄氏に並び歴代5位タイとなる、監督通算1384勝目をプレゼントした。

どうしても最後は真っすぐで決めたかった。9回2死1、2塁からのバッターに対して、あと1球に追い込むと、田中は捕手のサインに首を振り続けて直球また直球。四球で満塁として、次打者にもカウント2−0から直球。大きく外れたところで観念して、フォークで空振り三振を取った。 「アホウ!!」、 野村監督に鬼の形相で大目玉を食らった。右手で握手、左手で頭をはたかれたが、師匠の顔がたちまちほころぶ。

現代っ子だな。最後は150キロで三振、と夢描いたんやろ。まだ知らねえな。力任せはバカでもできる。速い球で三振を取りたきゃ、力を抜かなきゃ。随所に若さが出るけど、きょうは点を取られる気がせなんだ。安心して見ていた」。野村監督は監督通算勝利歴代5位タイに、「まだ5位か? じゃあ死ぬわけにいかんな。お迎えはもうちょっと待ってもらわないと。何でも2番目の人生やから、2番目にはなりたいな。するとあと何年やればいい? 他の監督は優勝できるチームでやってるけど、オレは他の1年分勝つのに2年かかるからなあ。鶴岡のおっさんより勝つには、あと40年ぐらいやればいいか。そうなると110歳までだな。頑張ろう」

野村監督は僻みっぽいくせに、他人をバカにする嫌味な奴だったが、近頃は味のある態度や発言をすることが多くなった。やっぱり、ボヤキのヌムサンも年ふり、人間が丸くなったんだろうなあ。そう思って、カレの試合後の監督談話を見てみると、年期を感じさせる発言が目立つ。滋味のあふれるものや、ユーモア、皮肉、自嘲、人生哲学が満艦飾となっている。サンスポなんか、「ノムサン談話」なる特別のコーナーを作って、おっかけをやってる。チョウサンこけたあと、球界では唯一の同期の桜だけど、いい年を取りつつあるなあって、つくづく実感させられる。月見草は枯れ方に味わいがある。