◆サクラ咲く

田安門から千鳥が淵

とうとう聞きたくもない記事が新聞の三面記事を派手に飾り始めた、サクラ咲くと。いつもなら、新聞記事を見る側ではなく、花を写す側にいるだけに、このもどかしさと屈辱感には目を覆いたくなるね。例年ならば、必ずどこかの渦に紛れ込んでいるはずだが、今年はそれが出来ない。ソメイヨシノ、シダレ、オオシマザクラエドコヒガンなど、長年馴染んできたサクラ君とは親しい付き合いが出来そうもない。その代わり、4月半ば過ぎに満開となる里桜の季節には必ずカンバックして見せるぞ。

日本列島は29日、日本海の低気圧に向かって南から暖気が流れ込んだため各地で気温が上がり、栃木県の小山で最高気温が26・2度、群馬県の上里見、水戸、福島県小名浜など、12地点で3月としては観測史上最高を記録した。気象庁によると小山と上里 見、水戸、小名浜の気温は7月上旬並み。 東京都心も24・1度と5月下旬並みで、平年より1週間早く全国のトップを切ってソメイヨシノが満開となった。

東京都の数多い桜名所のなかでも、千代田区千鳥ヶ淵ルートは1、2位を争うほど人気がある。ソメイヨシノなどが1082本ほど咲く。江戸城の石垣の城壁、青い水面の内堀、浮かぶ手漕ぎボート、薄紅色の絢爛豪華な桜との組み合わせはまさに天下一品だろう。

靖国神社の標本木の桜が開花したのが、20日だった。都民は満開の桜を待ち続けていた。29日午前中はまだ6、7分咲き。昼前からは気温が急上昇(23.6度)したことから、夕方前には桜がほぼ満開になった。内堀通りから北の丸公園の武道館を結ぶ、清水門が人気スポットの一つ。橋の左右の清水濠、牛ヶ淵の桜は最高のシャッター・チャンスの場所だ。日本人のみならず外国人を含め、デジカメ、一眼レフ、ケイタイ・カメラなどで桜花や蜜を吸うメジロなどを撮る。

俗に鶯色というと黄緑色に近い色をさしているが、実は眼の周りに白い縁取りがあリ、そのさえずりが美しい鳥、メジロの背中の色がいつのまにか取り違えられて「鶯色」と呼ばれるようになったそうだ。ウグイスが鳴き出す3月頃、好物である梅の蜜をせっせと吸っているため、間違えられたらしい。枝に身体を寄せ合って止まる習性から、「目白押し」という言葉も生まれた。ふだん見かけないメジロが群れをなして花弁をつついているのを見るのは、本当に嬉しい。