◆ノキ弁

ネコヤナギ

各駅停車の列車に乗って、行く先々の駅で、自慢の駅弁を買っては舌鼓をうったなんていうのは、過去の郷愁になってしまったなあ。だいたいが旅に出なくなったから、汽車に乗るなんてことがなくなったし、ローカル線はともかくとして、東京から旅に出るには、景色もろくすっぽ見えない新幹線に乗るしかない。いくら駅弁に郷愁があっても、これじゃ、まるで情緒とロマンに欠けるしなあ。それに駅弁はいつの間にか高くなっていて、とても庶民の食べ物とはかけ離れてしまった。

駅弁にはだれしも郷愁があるらしく、毎年恒例行事となっている新宿京王百貨店の全国駅弁祭りは今年も大盛況だったようだよねえ。今年の目玉は、アワビ一匹を使った豪華駅弁だったようだが、買い求める客の列が8階の会場から1階のフロアまで並んだそうだ。こうなると、もはや異常としかいいようのない過熱ぶりだ。

「ソラ弁」、「イソ弁」、「ノキ弁」という言葉もあるようだ。「ソラ弁」は、空港内で売られている弁当を指す呼称。2003頃から空港内で空港周辺地域の名産品などを食材として採用し、空港ごとの独自色を強く打ち出した弁当が販売されるようになった。経費削減のための国内線の機内食廃止や、航空券のインターネット予約の普及などで、空港内で滞在する時間が短くなったために、弁当を購入して飛行機内で食べる人が増えたためといわれている。登場当初は「クウ弁」と呼ばれていたが、現在は「ソラ弁」に落ち着いた。

「イソ弁」は新米弁護士が独立するまでの間、先輩の法律事務所に「居候」して給料をもらうという、この世界では常識だったシステムだ。ところが新たに「ノキ弁」という言葉がクローズアップされている。「ノキ弁」とは、イソ弁に変わり、固定給なしで事務所の机(軒先)を借りる独立採算型のスタイルをいう。司法制度改革に伴い、司法研修を終えた新米弁護士の数が、昨年より2500人も多くなる現状に対処したいと弁護士会でも推奨を始めた。

ノキ弁は電話、パソコン、コピーなどは自由に使えるが、固定給はない。事務所の弁護士が受けた依頼を共同受任し、報酬の一定割合をもらう。独力で引き受けた依頼は、報酬の全額が自分のものになる。これまでの実例によると、平均的なイソ弁の年収600万円と同等かそれ以上の収入を上げているという。