◆よなべ

ツバキ

<「かあさんの歌」を口ずさんでいたら、♪かあさんがよなべをして、手袋編んでくれた♪のくだりで、聞いていた若いスタッフに、夜鍋ってどんななべですかって聞かれて、思わず言葉に詰まった>。五木寛之の随筆の一節だが、たしかによなべっていう言葉を知らないのも当然だ。むしろ五木の歌う下手な童謡をじっと聴いていた、若いスタッフに敬意を払いたいよ。よなべは漢字で書くと夜鍋となるらしいね、これは知らなかった。

♪里わのほかげも、森の色も 田中の小路を、たどる人も
かわずのなくねも、かねの音も さながら霞める、朧月夜(朧月夜)

夕焼小焼の、赤とんぼ おわれて見たのは、いつの日か
十五でねえやは、嫁に行き お里のたよりも、絶えはてた(赤とんぼ)

あおげば とうとし、わが師の恩。 教えの庭にも、はや 幾年。
思えば いととし、この年月。今こそ 別れめ、いざさらば。(仰げば尊し

氷とけ去り 葦はつのぐむ。 さては時ぞと 思うあやにく
今日もきのうも 雪の空。今日もきのうも 雪の空。(早春賦2番)

さぎり消ゆるみなとえの 舟に白し、朝の霜。
ただ水鳥の声はして いまだ覚めず、岸の家。(冬景色)

いかにいます 父母 つつがなしや友がき 
雨に風に つけても 思い出ずる 故郷(故郷)

童謡の歌詞ってけっこう難しいんだね。文語体で書かれているものはなおさら難しい。子供の頃はまるで意味も分からず歌っていたけど、いまではどうなんだろうか。分かるはずがないよね。幾つかの童謡の言葉をちょっと紐解いてみたけど、難解なものが多いね。これは大いに研究する必要がある。日本語に興味あるものにとってはね。

ほかげは「火影」、おわれては「負われて」、いととしは「いと疾し」、つのぐむは「角ぐむ」、角ぐむの意味はわからん。「思うあやにく」は見当もつかない言い回しだ。「さぎり消ゆる みなとえの」は「狭霧消える湊江の」、いかにいますは「如何に在ます」、「つつがなしや友がき」は「恙なしや友がき」、友がきの意味はわからん。負われては追われて、いと疾しはいと年、いかに在ますは如何に居ますだとばかり思っていたよ。