◆早咲きのサクラ

オオカンザクラ

今年は確かに異常な年であることは間違いない。梅は場所によってはもう散っているし、小石川植物園のようにこれからが見頃なところもある。先日初めて訪れた池上梅園、旧藤山雷太邸だったところで、贅を尽くした庭園と、斜面を利用した見事な梅園に感嘆させられたが、残念ながら、盛りはとっくに過ぎ、たなびいた白い霞を見ているようなモノクロの風景にがっかりさせられた。

いつもなら、今頃は「オオカンザクラ」が見頃な時節だが、新宿御苑小石川植物園も花などほとんどなく、赤い萼だけが無残に残っている始末。今年は例年になく野鳥の数が多く、小さなメジロ程度なら愛らしいのだが、人相の悪いヒヨドリが大挙来襲してはハナビラを食い散らかす、ほんとうに憎たらしいったらありゃしないよ。御苑には野生のインコまでやってきて花をついばんでいたそうだ。これはゼヒ見たかったけどね。

例年にない暖冬のため、今年のサクラは極端に早く咲くんじゃないかって、誰しも思うけど、しかし、ことはそう簡単ではないらしい。ソメイヨシノなどのサクラのつぼみには、冬の一定の寒さが開花を促進する「休眠打破」と呼ばれる性質があるためだ。気象庁の開花予想の発表は来月7日だが、専門家からの「地域によっては開花が遅くなる所もありそう」との予測も出ている。サクラは花が散った後、夏までに翌年の春に咲く花芽を形成し、いったん、休眠に入る。その後、冬に5度前後の低温にさらされると、眠っていた花芽が目を覚ます「休眠打破」が起きる。さらに、2月以降に気温が上昇すると花芽が成長し、花を開かせる。

つまり、冬寒く、春先に気温がぐんぐん上がる気候条件が、サクラの開花に最も適している。「平成18年豪雪」と命名されるほどの厳冬だった昨シーズンは、休眠打破が進んだうえ、春先は一転して暖かくなったために開花は早まった。一方、今冬は昨年12月の気温が全国的に高く、年明け後も、その傾向が続いている。東京都心では初雪も観測されず、1月の平均気温は7・6度、休眠打破が必要なサクラには厳しい条件となった。