サクラ咲く

カンザクラ

沖縄でサクラ(リュウキュウカンヒザクラ)が満開になったという。今年は暖冬が続いているから、サクラも早咲きするんじゃないかって思ってはいた。でも、新宿御苑のHPを見ても、サクラの便りも3分咲きとしか出ていない。でも、花のほうが浮かれちまって、狂い咲きでもしてるんじゃないかって、気が気じゃなかった。で、出かけてみたが、なにが3分咲きなもんか、満開とはいかないまでも、カンザクラは華やかに咲き出していた。ウメはほぼ満開だったが、サクラ咲くとなると、神社がお似合いの地味目なウメには目が行かなくなる。

青空をバックに、メジロが飛び交う、ピンクがかったカンザクラ。サクラが咲き出すと、周辺の気分まで一斉に華やいで見える。春爛漫って感じが満ち満ちてきて、心身ともにリフレッシュされてくる。やはり「花は桜木、人は武士」って気分になる。ちょっと古い言い回しが思わず口をついてしまった。だけど、この文句、華やかに咲いて、潔く散っていくサクラの風趣を見事に伝えてはいる。

カンザクラが咲いているのなら、カワツザクラも咲いてるはずだと、おっとり刀で木場公園裏の大横川河畔にすっ飛んでいった。案の定、カワツザクラは華やかなピンクの大輪を風になびかせていた。やれやれ間に合ったか。例年、ついつい忘れてしまい、地団太を踏んでいたのである。

「花は桜木、人は武士」とは昔の諺だが、いうまでもなく花の中では桜の花が一番美しい。また人においては、桜の散り際に似て、死に際し潔い武士が一番であると謳っている。裏返せば、桜が見事に咲いてぱっと散るように、武士は、いつでも、どこでも、潔く死ねる覚悟がなくてはならないということでもあるようだ。一般的には、鎌倉幕府滅亡前後、湊川の別れに臨んだ楠木正成を指すようだが、実は「花は桜木、人は武士」には続きの文句がある。柱は檜、魚は鯛、小袖はもみぢ、花はみよしの、という続きの文句がある。どうやら、竹田出雲らの浄瑠璃本「仮名手本忠臣蔵」がその原典らしい。