納豆

納豆は体にいいからって、比較的食卓に乗ることも多いが、はっきりいってまずい。だからといって、嫌いというわけでもない。納豆単体では絶対食べられないだけだ。必ず生タマゴか大根オロシなど、液体を伴うものとシンクロさせて、のどの奥に流し込んでいる。時間があれば、じっくり125回かき混ぜて、独特の粘りを出させる。なぜ125回なのか、それは経験則からだとしかいいようがないね。

一度やったきりで、二の矢は放っていないが、味噌汁の具とテンプラのネタとしての相性もよさそうである。あのねばっこさが熱で消えて、実に淡白な味になる。そのあまりの変わり様が、納豆に対する冒涜のように思われて、その後やってはいない。健康ブームが長く続いている。最近「みの・もんた」の昼の番組を見ることはないが、以前のように毎回、身体にいい食べ物を取り上げているんだろうか。あの番組を見ていると、なんでも身体にいいっていうことになりそうだ。あの番組で取り上げると、翌日には商品が空っぽになってしまうなんて社会現象にもなった。

甘納豆も大好物だから、バーゲンなどで売っていると、ついつい手が出てしまう。だけど安物を買ってくると、一様にアズキの粒が硬くて歯に詰まる。でも白天豆、黒天豆、金時、青豌豆、小豆の5種類の中から、選び分けながら食べる楽しさがある。青豌豆が一番好きで、その次が金時、数多く混じっている中から、青豌豆をかみつぶす時の幸せな瞬間はたまらないね。

ほんとうは濡れ甘納豆のアズキが一番おいしいんだが、けっこう高値設定なので、中々口に入りにくい。こちらは、なんといっても大粒のアズキに限るね。かみしめると、甘さとともに果肉が口中に広がる感覚が応えられない。できれば、4-5粒をまとめて口に放り込み、ハーモニーを楽しむのがいい。

以前通い続けた飲み屋の名物「五色納豆」は優れものだった。丼に盛られたご飯の上に、「細切りされたマグロ、イカ、小柱、納豆、タクワン」がてんこ盛りされ、卵の黄身」が乗っている。小皿にたっぷりのワサビを醤油でとき、どんぶりの上にぶっかける。それを豪快にかき回しながら食べるのである。これはたまんない旨さだったね。余計物と思われたタクワンの細切りが、音響効果など、実に効果的役割を果たすのには驚いたね。