フマキラー

雨上がりの午後、ジメジメとした小石川植物園の森を散策した。新鮮なオゾンが溢れており、ジュータンのように広がった、濡れそぼった落葉のしとねを踏みしめながら歩いていると、生き返ったような気持ちになる。だが、その思いもたちまち破られてしまった。ヤブカの数が尋常でなく、ロマンの香りもあっという間に消し飛んでしまった。帰りにスーパーをのぞいたら、首からかける小型の殺虫液入り容器を見つけた。電源を入れると、液体が気化され蚊の侵入を防ぐ優れものだという。さっそく買い求め、必携品に加えることにした。

いま、アメリカ全土で、「アジアの虎」が大活躍しているという。日本のヤブ蚊が米国に渡り、アジアの虎、「asian tiger mosquitoes」として猛威をふるっているのだ。83年7月、テネシー州メンフィスの墓地で発見された。日本が輸出した古タイヤに潜み、テキサス州ヒューストンに上陸した、と専門家は断定した。 5年前には首都ワシントンに進出、いまや全米を席巻した。米国から南米にも勢力拡大中だ。虎は、99年にニューヨークで流行し、パニックを起こした西ナイル熱のウイルスも媒介する。日本では発症例はない。それだけに、年間8万7000の国際便が着陸する成田空港の検疫所は、この病原体をもった虎、ヒトスジシマカの再上陸を厳重警戒している。

10円玉でボウフラを撃退できる? 銅を水に入れておくと、蚊が発生するのを防ぐ効果があることが、非鉄金属大手などでつくる日本銅センターの実験でわかり、今年から屋外で実証実験を始めた。殺虫剤が効きにくい蚊にも有効だという。「墓地の花入れに10円玉を入れると、蚊がわかない」という言い伝えをもとに実験した。まず「ヤブ蚊」ともいわれる一般的な蚊、ヒトスジシマカの幼虫(ボウフラ)を銅製の容器で飼ったところ、すべて羽化せずに死んだ。次に、都会で1年中発生するチカイエカの幼虫で殺虫剤に抵抗性があるものを、繊維のように細い銅線と一緒にガラス容器に入れたところ、やはり全滅したそうだ。