神田界隈
千代田区の神田界隈はよく散策する界隈だが、いつも気になっていることがある。戦後の町名変更で、いたるところが味気ない町名に変更されてしまったのに、この神田界隈の一部には、昔ながらの町名が残っている。地図を見てみると分かるように、旧神田区の大半の地名の前に必ず神田が着いているのである。しかも市ケ谷同様小さな町名が多いのだ。
神田相生町、神田淡路町、神田和泉町、神田岩本町、神田小川町、神田鍛治町、神田北乗物町、神田紺屋町、神田佐久間河岸、神田佐久間町、神田神保町、神田須田町、神田駿河台、神田田町、神田司町、神田富山町、神田錦町、神田西福田町、神田練塀町、神田花岡町、神田東紺屋町、神田東松下町、神田平河町、神田松永町、神田美倉町、神田美土代町。
改めて見てみると、北乗物町、佐久間河岸、松永町、花岡町なんて町名は、さすがの地理博士でも、初めて目にする代物だ。しかも同じ千代田区なのに、神田平河町とは別の平河町がある。東京のへそに当たる、こっちの平河町の方がずっと有名だけどね。その他にも内神田、外神田、西神田、東神田という大きなくくりもあり、千代田区で、神田がつかない地名はまるでもぐりのようだ。
須田町界隈は、数次に及ぶ東京大空襲を奇跡的に免れた数少ない地域である。だから、神田多町には依然として看板建築が残っているし、旧神田連雀町(須田町1丁目の一部)の一角にはグルメ垂涎の古い家並みが残っている。明治・大正の頃から営業を続けている名店が数多く櫛比しているが嬉しい。「神田藪蕎麦」、アンコウ鍋「いせ源」、鳥料理「ぼたん」、甘味処「竹むら」、立て直されちゃったけど,洋食「「松栄軒」、蕎麦の「まつや」などである。先日久し振りにのぞいたら、この裏通りにも開発の波が押し寄せているのを知った。いせ源、ぼたんの細い路地の向う側に、高層ビルの建設が始まっていたのである。この取り残されたような懐かしいレトロ空間もまもなく見納めになりそうだ。