お茶をひく

♪ずいずいずっころばし ゴマ味噌ずい 茶壺に追われてトッピンシャン
 抜けたらドンドコショ 俵のネズミが米くってチュウ チュウチュウチュウ
 お父さんが呼んでも お母さんが呼んでも 行きっこなあしよ
 井戸のまわりでお茶碗欠いたの だあれ♪

なんとも面妖でおかしな歌詞ばかりだが、こんな歌詞の歌が子供の遊び歌になったのが面白い。言葉遊びや調子の良さを狙った特に意味のない言葉もあるが、1つ気になるのが「茶壺に追われて」という部分だよね。

これは江戸時代の御茶壺道中のことを表現しているらしいね。幕府に献上する御用茶を宇治から江戸まで運ぶ「宇治採茶使」という役職による行列のこと。百個以上の茶壺に数百人の役人が付き、その地位は大名行列よりも上とされていた。茶壺に追われるとは、この行列から逃げるようにして家に籠もったということだとさ。ちなみにその後の「トッピンシャン」は戸をピシャっと閉めること、「抜けたらドンドコショ」は行列が通り過ぎた後にやれやれという感じ…と言われるが、この辺りはハッキリしていない。

ところで、「茶」という言葉を頭にのっけた言い回しがたくさんあるね。「お茶の子さいさい」、茶という表現は、単純に飲むお茶だけをさすのではなく、茶粥などの茶をベースにした食べ物もさしていた。だから、茶の子というのは、必ずしも飲むお茶に付随する食べ物という意味ではなく、主食に準じる食べ物としての茶よりもさらに簡単な食べ物、ということになる。

「お茶を引く」、昔は茶壺で保管した碾茶(てんちゃ、まだ粉になっていない)を茶臼で挽いていた。客のつかない遊女が茶臼で茶を引いて時間をつぶしたところから、その日の仕事にあぶれることを茶を引くというようになったとされている。この言葉からうまれたのが、「おちゃっぴい」で、元気のいい女の子のことをさす。劇場で下っぱ役者が茶をだす仕事を務めたのを茶番といい、その茶番が演じた他愛のない演し物が茶番劇。のちにおどけた劇や見え透いた作為のことをさすようになった。