天声人語

前回、平成の大合併について書いたが、朝日新聞天声人語」にも同じような観点の記事が載っていた。見落としてしまった部分もあったので、再録しておく。

春めく風に誘われて、ふらりと旅に出たくなった。南アルプス(山梨)の、みどり(群馬)が芽吹くころ、つがる(青森)平野に、さくら(栃木)は咲くだろうか。ハイキングなら、妙高(新潟)、安曇野(長野)、八幡平(岩手)あたりが楽しそう。川くだりもいい。千曲(長野)、阿賀野(新潟)、四万十(高知)や紀の川(和歌山)、吉野川(徳島)の清流を堪能したい。島めぐりは淡路(兵庫)、佐渡(新潟)から江田島(広島)、長崎県壱岐対馬、五島を回り、天草(熊本)、奄美(鹿児島)、宮古島(沖縄)にも足を延ばそうか。

くつろぐには、やっぱり温泉でしょう。下呂(岐阜)、あわら(福井)、那須塩原(栃木)に行こうか、九州の雲仙(長崎)、嬉野(うれしの)(佐賀)にしようか。お湯につかって夜空を見あげれば、北斗(北海道)の星々が輝いているかもしれない。瀬戸内(岡山)で水遊びをして、阿波(徳島)で踊りあかすのも愉快だな。伊賀(三重)と甲賀(滋賀)の忍者の里ツアーは、子どもが大喜びしそう。おいしいものが食べたくなったら、さぬき(香川)うどんも、魚沼(新潟)産のコシヒカリもある。

いわゆる平成の大合併が、今春で一段落する。3月末までの5年で、市は100ほど増える。この間に誕生した新しい市の名前を並べただけでも、ちょっとした行楽気分に浸れる。でも、本当に出かける時には地図を持ち歩こう。伊達は北海道と福島にあり、山県は山形でなく岐阜にある。匝瑳(千葉)や宍粟(兵庫)なんて読みにくい名前も多いのだから。