爾系列

印鑑のことをハンコというのは何故なのだろうか。これは「版行」が訛ったもので、浮世絵などを版画に刷る様子と、印鑑を押す仕草が似ていることからきたようだ。印章は中国では臣下が使った印鑑を指し、君子の押す印鑑は璽と呼ばれ区別されていた。戦前、昭和天皇の勅令の末尾に「御名御璽」とあったが、この璽の部分に天皇の印鑑が押されていた。東風とらの光爾の爾を説明するのに、御名御璽の璽から玉を取ってくれなんて、畏れ多いことも言ってたっけな。(今じゃ、まったく通用しないけどね)

「光爾」の「爾」だが、難しい字にもかかわらず、時々有名人の名前にも見受けられ、以前に比べれば、かなり認知されることになった。世界的な指揮者・小沢征爾が代表格だが、同じく指揮者・野町琢爾、倉敷美術館館長・高階秀爾宝塚歌劇団理事長・植田紳爾、歌手小椋佳の本名・神田絋爾、など錚々たる名前が並んでいる。秋の叙勲者の名前の中にも、何人か爾系列の人名が連なっていたが、ずいぶん肩身の狭い時期もあったが、いまや、この「爾」もようやく1人前となったようである。

爾という字はそれ自体に「そのまま」という意味があるから、東風とらの光爾は光そのままという意味になる。けっこう毛だらけ猫灰だらけな名前だが、すっかり名前負けして、夢は夜開くといった感じで人生暗かった(ウソだよん)。あまりよすぎる名前をつけるのもよしあしで、最近の新生児の面妖不可思議な名前を見るにつけ、そう思うね。先日何かを読んでいたら、「小池爾」さんという名前が出てきた。当然誤植だと思いつつ読んでいたのだが、やはり「爾」一字だけの名前で、なんと「ちかし」と読ませるという。そんな読み方知らないよ、ちょっとルール違反じゃあないんかなあ。