付け足し言葉

言葉の頭や語尾に引っ掛けて使うダジャレのことだよ。たとえば「驚木桃の木山椒の木」「とんだところに北村大膳」「そいつは桑名の焼蛤」「畏れ入谷の鬼子母神」「夫どっこい」などだ。だいたいがテキヤの口上に使われた故事に引っ掛けた文言が多いが、リズム感があって威勢がよく、気の利いた小粋なセリフがとても気に入っている。

オリーブの産地として有名な小豆島にある「二十四の瞳」の作家、壷井栄の碑の傍には「驚き桃の木山椒の木、桃、栗3年、柿8年、柚は9年で成り下がり、梅は酸い酸い13年、梨の大馬鹿18年」って碑まであるそうだからねえ。

何事をするにもそれ相応の時間がかかるという意味だが、他にも「枇杷は9年でなりかね、梅は酸い酸い13年」とか「柚子は9年で花盛り、梅は酸い酸い13年」などある。同じような言葉の表現に「桃栗三年後家一年」というのもある。男を知った若後家って、お色気が悲しいヴェールに包まれて、一際男心を誘うもんだよなあ。「やはり野に置け蓮華草」っていう句もいい。

「六日の菖蒲 十日の菊」は大切な時に間に合わず、時機を失す喩えだ。5月5日は菖蒲を供える端午節供、9月9日は菊を供える重陽節供、俗に菊の節句ともいわれた。

「おっと合点承知の助」、「当り木車力よ車曳き」、「蟻が鯛なら芋虫しゃあ鯨」、「なぬか用か九日十日」、「なにが南京唐茄子かぼちゃ」、「なにが南京玉すだれ」、「うそは築地の御門跡」など、すっかり忘却の巷をさ迷っていた言葉も載っていた。