御の字

「御の字」っていうと実力的にこれ以上ない有難いことって意味だが、この「御」という字、「おん」「お」「み」「ご」と発音を微妙に変えながら、身の回りで最も重宝な敬語、丁寧語として使われるねえ。こ難しい日本語を代表するような簡にして妙、見事な変化球といえる。帯に御をつけると「おおび」となり発音しづらいから、さらに御をつけて丁寧にした「おみ帯」、足に御をつけると「おあし」になり、「お金」と紛らわしくなるから、「御御足」(おみあし)。同じように、おみくじ(御御籤)、おみこし(御御輿)、おみき(御御酒)、おみおつけ(御御御付け)、おみおり(御御折り)などあるねえ。おみ折りっていうのはバブル華やかなりし頃、料亭などで客のお土産用に用意された折詰料理のこと、懐かしいなあ。

成り上がりだというのが一目でわかる、けばくて品ないオバチャマが気取ってのたまうボキャの中に、「おご馳走様」という言葉がある。漢字で書くと「御御馳走様」ということになるが、聞くのと書くのとでは大違い、バカ丁寧もいい加減にしろって感じだ。