引き手

引手

「ほら、あれ何だっけ?ふすまを開け閉めするときに手を掛ける、丸いあのさあ」、言葉が出てこないのは、大部分歳のせいだと思うけど、そればかりではないようだねえ。ふだん、何気なく目にしたり、手にしたりしているモノの名称、ことに部分名称は、意外なほどわからないもんだからだ。まして昔のモノとなれば、なおさらだよねえ。そのあれは「引き手」というんだよ。「ああ、そうだったね」なんて気楽にはいえないね!だってこんな言葉、まったく知らなかったもんね。

襖って道具と言葉が畳とともに生き残ってしまったのは何故なんだろう。我が家でいえば、大黒柱、床柱、床の間、神棚、唐紙、長押、鴨居、洋服箪笥、衣紋掛、違い棚、台所、勝手口、三和土、竈、釜、框、薬缶、七輪、盥、湯湯婆、米櫃、手水鉢、卓袱台、火鉢、お膳、炬燵、行火、蚊帳、格子戸、雨戸、雨樋、縁側、割烹着、掻い巻なんかが次々消え去っていった。たらいなんて字、もう一度書けたって絶対に書けないね。