味の素

ナノハナ

未だにサツマアゲや冷奴、海苔、生揚げ、おひたし、おしんこうなどを食べるときにはなくてはならないのが味の素である。味の素そのものは、舐めてみるととっても苦りがあって不味いものなんだが、色んなものにふりかけると、素材そのものの持っている持ち味を巧みに引き出してくれる、とっても乙な調味料である。実家に泊まると亡くなった義理の母が必ず朝食に出してくれたのが、濃い味噌汁と、醤油にびっしりと埋まった鰹節、とそれにジャブジャブとかけた味の素の小皿だった。それをご飯にかけて、さっと炙った江戸前のパリっとした焼き海苔で食するとまだ朝だというのに、軽くご飯茶碗3倍は食べられた。いわゆるネコマンマ、これがまたチョー旨くて、上手そうに食べてる姿を嬉しそうに眺めていた義母の印象が強く残っている。

あのちっぽけな赤いビンの調味料の製造販売だけでスタートした会社がその製造技術の応用で世界に君臨する様は見事なもんである。病院で使われる点滴治療にはアミノ酸溶液が欠かせないものとなっているし、ズワイガニやウニのあの甘さは、アミノ酸がもたらすものといえる。おなじようにカルピスもこれ一本で会社を大きくしてきたが、いまじゃあ、味の素の関連会社に組み入れられてしまったのは皮肉なことではある。