むべなるかな

天藤真「大誘拐」

ムベという植物はアケビと対比されるつる植物。アケビは落葉し、果実は開き、山に生えるが、ムベは常緑で、果実はふつう裂けず、主に暖地の海岸林に分布する。果実は同じく食用に。暖地の造園には冬も青々と茂るムベが、おもしろい。

「むべなるかな」は宜なるかなと書き、「いかにも」とか「ほんとうに」という意味に使われている。ムベという植物はアケビによく似ていることから、むべなるかなっていうことで、そんな名前が付いたんじゃあないかなって、勝手に推察している。

無垢、無辜、無碍、無聊、無窮、むを冠に抱く文字は何でこのように難しい字を書くのだろうか。そういえば無じゃあないけど、三鷹市に牟礼という地名、江戸時代に室鳩巣という学者、昭和になって椋鳩十なんて小説家もいたっけなあ。

奈良県の中に和歌山県の飛び地があるんだけど、その北山町は東牟婁郡に属しており、東牟婁郡西牟婁郡とともに南紀熊野地方を包含する大きな郡で、観光名所南紀白浜町、那智熊野町、漁港として知られた串本町捕鯨基地として有名だった太地町等が属している。東牟婁郡北山町なんて聞くと凡そ縁のない地名だけど、この地を舞台に展開された小説とそれを映画化した[[大誘拐」という傑作によって、一躍全国区になったんだっけ。あの映画の主役を演じた都蝶々は素晴らしい存在感を見せつけてくれたっけなあ。