一文字

神田・出雲屋

大相撲平幕中堅に「大文字」という力士がいるけれど、いい身体をしているのに脇が甘く、いつも脇役に甘んじているのは情けない。むかし、「柔道一直線」という人気番組があっったが、宙に舞いながらピアノを両足で弾いてしまうような、軽妙なわざと強さを併せ持つ猛者が登場、その名を「一文字隼人」といった。

一文字を「ひと文字」と読むと雰囲気はがらりと変わってしまう。最近の銭湯はすっかり様変わりしてしまったが、とりわけ目立つのが銭湯組合の指導で、看板や暖簾に一文字で「ゆ」と書くところが多くなったことだ。ブルーの下地にピンクの一文字、このかな一文字ってけっこう目立つもんだね。いまはなくなっちゃったけど、ヒサヤ大黒堂の「ぢ」、そして、いまも健在、神田・出雲屋の「う」なんて、看板見ただけでも嬉しくなっちゃうね。

「湯文字」という艶かしい言葉もいつのまにか死語となってしまったなあ。大体が腰巻そのものが生活習慣から消えてしまったんだから、どうしようもないけどね。戦後もオバアチャンが愛用していたから、腰巻そのものについての知識は辛うじてあったけど、もっぱら時代小説や時代劇でしか見られなくなってしまった。「あれー!お代官様」なんていいながら、腰元が帯を解かれグルグル回され、気がついたら湯文字一つにさせられているなんてシーン、ドキドキさせられたっけなあ。

「みそ一文字」って言葉なんか、今の若い人にはまるでピンとこないフレーズだから、絶対流行んないね。五・七・五・七・七、合わせて三十一文字になることから、和歌、短歌のことをいうんだが、まず意味も分からないだろうし、味噌を付けちゃうのがオチだ。そういえば歌留多名人を13歳の女の子が前チャンピオンから奪取したけど、その手捌きの早さといったらないね、ありゃあまったくの格闘技だったよ。