熟字訓

五倍子(きぶし)

百舌鳥と書いてモズと読ませるわけだが、これってどこまでが「モ」で、どこからが「ズ」なんだろうって素朴な疑問が生じるよねえ。「紅葉」を「モミジ」と読む場合も似たような疑問だ。 実は、これらは「熟字訓」と呼ばれ、「百舌鳥」の3文字で「モズ」、「紅葉」の2文字で「モミジ」であって、他にも、「今日(きょう)」「土産(みやげ)」などが同じ文字群といえそうだ。
 
多くの場合は漢字で書くと、ひらがなで書いた場合に比べて文字数が少なく済み、それが漢字を使う一つの効用(?)だったはずなのになあ。さっそく調べ始めたら、こういうことにも同好の士が多いらしくて、労せずしてたちまちのうちに、いくつもの椿事じゃあなくて、珍字にお目にかかることになった。その中でから、いくつか書き出してみる。

蝦虎魚(はぜ))、海鼠(いりこ)、胡頽子(ぐみ)、五倍子鉄漿(ふしかね)、香具師(やし)、再従兄弟(はとこ)、再従姉妹(はとこ)、山毛欅(ぶな)、似而非(えせ)、七五三縄(しめなわ)、小啄木鳥(こげら)、青花魚(さば)、石伏魚(ごり)、大口魚(たら)、桃花鳥(とき)、如何う(どう)、梅雨入り(ついり)、木五倍子(きぶし)、野木瓜(むべ)、老海鼠(ほや)。

これが人名さんとくれば当て字、謎解きの大巣窟、とてもじゃあないが簡単には読めない仕組みとなっている。たとえば「八月朔日」「八月一日」で「ほづみ」、「四月朔日」で「つぼみ」、月見里(やまなし)、上別府「びふ」、同じく上別府(うえんびゅー)などがある。最後の読み方なんて別府に住む外人さんが音の響きで意訳したような苗字だよなあ。

せっかく珍名さんを取り上げたので、おまけを幾つか。四月一日(わたぬき)、小鳥遊(たかなし)、百目鬼(どうめき)、訓覇(くるべ)、薬袋(みない)、笛吹(うすい)、善知鳥(うとう)、五百旗頭(いおきべ)、莅戸(のぞき)など。のぞきさんはさぞかし先祖を恨んだことだろうなあ。