しゃく

なにげなくつけたテレビで、近々放映するという聖徳太子番組の宣伝をしていた。
ふと、彼が手にしていた長い木片は何といったかが気になりだして、調べてみると、それは「笏」(しゃく)だという。
飯田蛇笏の読みがそうだが、本来は「こつ」と呼ぶのが正解なのだが、日本では「骨」と同じ読み方だったことから避けられた。
「しゃく」になったのは、木片の長さが1尺だったことからだそうである。

笏は貴族階級が威厳を示すために儀式のときに持つ物だったが、そもそもの用途は、備忘録だったようだ。
儀式のとき忘れないよう、式次第を書いた紙を貼って持っておいたわけだ。
聖徳太子といえば才気煥発な聖人のイメージだが、さて彼の笏はアンチョコとしても役立っていたのだろうか。
笏の材料は、もとは象牙が求められたものの入手しにくいので、その後は、櫟の木で作ったものを最上とするようになった。
最上のもの、一位がイチイか、と笑ってしまうが、どうやらことは逆で、位階が正一位の人の笏を作ったから、その木がイチイと呼ばれるようになったらしい。

すこし気分を味わってみるかと紙で小さな笏を作って手にしてみたら、不思議なもので、それだけで背筋がしゃんと伸びる。
まあ、中身が伴わないので人が見たら、小癪な奴めと思うのがオチだろうけれど。あ、こちらのしゃくは笏ではないので念のため。