正露丸

正露丸

いまじゃ正露丸となっているようだが、ラッパのマークでお馴染みの、このハナクソを丸めたような丸薬、初めは征露丸、つまりロシアをやっつけろなんて、勇ましい名前だったと記憶している。
日露戦争の頃、発売されたわけで、歴史の重さを感じるよな。
正露丸という名前が古臭いので「クレオソート」なんて呼んで粋がってたこともあった。
完璧に下痢をシャットアウトしてくれる、日本を代表する妙薬で、ガキの頃オバアチャンに、この薬は風邪にもよく効くんだって、無理やり飲まされたことも多かった。、
そして不思議にもよく効いたんである。
あの強烈な匂いといやな触感、薬を広げた手の中にも、飲み込んだ後の口中にも広がった、あの不快感はずーっと残っていた。
それが嫌で、オブラートに包んで飲んだりしたもんだが、いつのまにか良薬は口に苦しの言葉どおり、どこへいくにも一緒に連れて行く付き合いとなってしまった。
いつかホンコンの税関で、なにか匂いがするからカバンを空けろといわれたが、予想通り犯人は正露丸、税関の役人も蓋をあけて匂いを嗅ぐや否や、慌ててつっかえしてきたのには大笑いしてしまった。
時代の趨勢とともに、セイロガントーイなんて洒落た名前を付けて、飲みやすい錠剤も売っているが、やはりハナクソを丸めた奴じゃなくちゃ、効いた気がしないし、事実ああ嫌だなあって思いつつ、鼻をつまんで飲まなくては効き目は半減するのである。
もっともこの妙薬、下痢退治には功績大なるもんがあるけれど、使用後にどうしても便秘がちになるのが玉に瑕なんだなあ。