秋の気配

ゆうべ大きな音を立てて虫が飛び込んできた。おおかたカナブンの類と思ってほっといたが、壁にへばりついていたのは、なんとコオロギだった。「蟋蟀」なんて久し振りにお目に掛かった気がする。あんまり懐かしいのでじっくりと観察したけど、さすがに熊谷守一のように細かな観察はできないでいたら、机の下に潜り込んでいった。どうやら今夜は我家に野宿するらしい。「秋の日のビオロンの溜息」という上田敏の名訳が頭をかすめた。暑い暑いと思っていたが、いつのまにか秋が忍び寄っている。ちなみに平安時代、コオロギはキリギリスのことだったようだ。