◆大隈講堂

大隈講堂

年2回の「森の歌の会」の二次会で、早稲田正門斜め前の眺望レストランに入った。早稲田大学のシンボル・タワー「大隈講堂」の時計塔は、いつも下から見上げていたのだが、今回初めて上から見る機会に恵まれた。いつも堂々と君臨している、このタワーだが、上から見たって、やはり堂々と格調が高かった。このタワーを見ていると、どういうわけか涙がにじんでくるのを禁じ得ないね。

この見下ろしている建物、確かむかしは、この辺りに、昼飯時、イカ天丼をかっこみに、よく通った蕎麦屋「??庵」などがあったような記憶がある。この建物は早稲田大学26号館とあり、この15階にある眺望レストランは「西北の風」というネイミングだ。周囲に高い建築物がないこともあり、見晴らしは抜群に良く、目白の東京カテドラルや音羽講談社、椿山荘、東京ドームなどがよく見える。昼間に訪れたのは初めてだったから、色々と懐旧にふけることになってしまった。

まずは真下に見えるは、大隈講堂の屋根だ。この大隈講堂には、この日集まった面々にはそれぞれの思い入れがある。ここに集まったメンバーは、1956年6月23日、早稲田大学混声合唱団が第一回定期演奏会を開催し、ショスタコービッチ作曲のオラトリオ「森の歌」を演奏した時のメンバーなのだ。当時のプログラム表紙
には、定期演奏会とあるだけで、第一回という肝心の数字が抜けている。それどころではないという、当時の切実な事情が垣間見られる。

のちに50年史の編纂に当り、この辺りが問題となったようだが、二回目以降の定期演奏会からはきちんと回数を明示しており、結局はこの演奏会を第一回と見倣すことになったそうだ。大隈講堂の上に広がる古びた建物、いまでも現役として使われている「2号館」、この屋上横にわれら混声の小さな部室があった。青春のすべてを投じた部室だったが、いまはもうない。

右手に広がるのが大隈庭園、上から見下ろすと結構小さく見えるが、この庭園と隣接する大隈会館にも思い入れがある。コチトラ夫婦が結婚式を挙げた思い出の場所なのである。当時1日2組しか取らなかったから、時間はたっぷりあり、大隈庭園も開放されていたので、中々いい結婚式だった。因みに招待客一人当りの費用はなんと800円、何年かあとに、義妹が披露宴の会場に選んだホテル・ニュージャパンの一人当り費用は2500円、コース料理も早稲田の方が1品多かった。