◆寂しいねえ

冬ボタン

70歳近くなった頃は、自分と同じ年頃の有名人の訃報に接すると、我が身に置き換え、とっても嫌な思いをしたもんだった。ところが、いまじゃあ、そんなの当たり前って割り切れるようになり、そうした訃報に接してもあまり驚かず、なんだ、まだ生きていたのかなんてうそぶくようになった。確かに他人の生き様を気にするより、自分の生き様を模索することの方が大事という年回りになっている。

牟田悌三が亡くなった、享年80歳。渋い声と滑らかなしゃべり口で鳴らした声優界のリーダー的存在で、その後テレビ界にも進出、「ケーキ屋ケンちゃん」のオヤジ役なんかでいい味を出していた。カレが亡くなったと聞いて、あれっ、おかしいなって、咄嗟に首をひねったもんである。何故なら先週の朝日be版、読者の選ぶ「日本一のキャンパス」で1位に選ばれたのが北大・札幌キャンバス、その選者役を担わされていて、北大への憧憬を元気に語っていたからである。それを読みながら、ああ、元気にやってるんだと懐かしく思ったから、より一層奇妙に思ったのである。さっそく幾つかの新聞の訃報欄をなめるようにひっくり返し、やっぱりなって思った。死因は心筋梗塞、風呂場で急死したそうである。くわばら、くわばら、気をつけなくちゃね。

日活のチンピラやくざ役での印象が強い俳優佐野浅夫が「徹子の部屋」で、元気にしゃべっている。83歳だそうだが、顔の色艶もよく、髪もふさふさとしている。名物番組「水戸黄門」で何代目かの黄門に扮していたが、なんとも元気のない黄門様で、1クールか2クールで、お役ご免となってしまった。悪役専門だった俳優が極めつきのいい役に扮するんだから、違和感も大きかった。さて、その佐野浅夫だが、なんと75歳の時、21歳年下の元祇園芸妓と再婚したという。番組後半で奥方も登場したが、なんで、あんなジジイとってダレでも思いそうな、すこぶるつきの美人だった。世の中にはどう間違ったのか、しあわせ一杯のジジーもいるもんだなって、半ばあきれ返ってしまったね。

NTTドコモのCMにどういうわけか山崎努が出ている。陰のある役をやらせたら天下一品の名優だが、年を取ってクシャクシャの汚らしいオジさんになってしまっていた。セリフも少なく「羊じゃなくて執事」なんて駄洒落をいわされている。かっての大物俳優がジャニーズくんだりのジャリタレ相手の引立役だもんなあ、うら寂しくなっちゃうよねえ。