◆悪友2

深川よさこい

8月1日に亡くなった作詞家、作家の阿久悠さんを「送る会」が10日、東京都千代田区のホテルで開かれ、ゆかりの約1200人が参列した。祭壇には、今春、CM用に撮り下ろされたという、バーのカウンターでグラス片手に振り返る遺影が飾られた。「また逢う日まで」など多くのヒット曲が流れるなかを、ピンク・レディー未唯さんや増田惠子さん、八代亜紀さんら、阿久さんの詞を歌った多くの歌手が献花した。

引き続き、前回書き切れなかった作詞家・阿久悠に関するオマージュ。なにせ、硬軟あわせて、5000曲近い楽曲があるんだから、印象に残っている曲も数多いが、その中で特に印象に残っている歌詞を羅列してみる。印象的な歌詞は沢田研二「時の去りゆくままに」、「勝手にしやがれ」、八代亜紀「舟唄」、「雨の慕情」だ。

<♪お酒はぬるめの燗でいい 肴はあぶったイカでいい 女は無口のひとがいい 灯りはぼんやりともりゃいい♪>(舟唄)

<♪心が忘れたあのひとも 膝が重さを覚えてる 長い月日の膝まくら 煙草プカリとふかしてた♪>(雨の慕情)

<♪窓ぎわに寝返り打って 背中で聞いている やっぱり お前は出て行くんだなあ 悪いことばかりじゃないと思い出かき集め 鞄につめこむ気配がしてる♪>(勝手にしやがれ

<♪時の過ぎゆくままに この身をまかせ 男と女 ただよいながら 堕ちてゆくのもしあわせだよと 二人つめたいからだ合わせる♪>(時の過ぎゆくままに)

「舟唄」と「勝手にしやがれ」は、もうこのさびの部分だけで、曲の評価は決まっちゃったようなものだね。とりわけ、「肴はあぶったイカでいい」(舟唄)、「背中で聞いている」(勝手にしやがれ)。この殺し文句となるフレーズだけで、この2曲は名曲の仲間入りしたね。逆に「雨の慕情」と「時の過ぎゆくままに」は絶唱部分が最大のハイライト、なんとも味なセリフで盛り上げている。「心が忘れたあのひとも 膝が重さを覚えてる」(雨の慕情)、「時の過ぎゆくままに この身をまかせ」(時の過ぎゆくままに)。こういった感覚って、ぼくら凡人には気付かないことだよなあ。

話はガラリと変わるが、享年は人や動物が「天から享(う)けた年数」という意味で、この世に存在した年数を表わす。よく「享年70歳」という「歳」をつけた表記を見受けるが、「享年70」と表記するのが正しい使い方だ。阿久悠の場合、生年月日、1937年2月7日、没年月日、2007年8月1日、生存した年数、70歳と約6ヶ月、数え年で表記は享年71、没したときの年齢、満70歳(数え71歳)、表記は(70歳没)となる。(8月2日記)