富士山

いま、日本の文化遺産は13ヶ所を数えるが、日本の代名詞のような富士山が入っていないというのは、いかにも腑に落ちなかった。推薦されない最大の原因は、山が登山客に汚染されているという悲しい事実だった。金満日本を象徴するような「なさばな」である。「フジヤマ・ゲイシャ」「一富士・二鷹・三茄子・四扇・五煙草」と謳われた日本一の富士山が、ようやく国際舞台へ名乗りを上げる時がやってきたようだ、「遅かりし由良の助!」

文化庁は23日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産登録に推薦するための暫定リストに、富士山(静岡県山梨県)など4件を追加すると発表した。追加が決まったのは、富士山のほか、富岡製糸場と絹産業遺産群群馬県)、飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群(奈良県)、長崎の教会群とキリスト教関連遺産長崎県)。暫定リストに追加記載が行われるのは6年ぶりだ。その後、準備が整ったものから登録推薦書の提出などを経て、同委員会で認められれば登録が決まる。登録には早くても3年近くかかるという。

現在すでに暫定リスト登載されている物件は、「平泉の文化遺産」(岩手県)、「古都鎌倉の寺院・神社ほか」(神奈川県)、「彦根城」(滋賀県)、「石見銀山遺跡」(島根県)の4ヶ所ある。既存リストは次のとおり。<1.古都京都の文化財、2.古代奈良の文化財、3.法隆寺地域の仏教建造物群、4.紀伊山地の霊場と参詣道、5.姫路城、6.白川郷五箇山の歴史的集落群、7.厳島神社、8.広島平和記念碑〜原爆ドーム、9.屋久島、10.琉球王国のグスク遺跡群と関連する遺跡群、11.日光の社寺群、12.白神山地、13.知床>

これまで登録されている日本の文化・自然遺産は13ヶ所、風光明媚な場所、歴史的遺産を数多く有している日本としてはいささか物足りない数字といえる。その中ででも、自然遺産として登録されているのが、屋久島、白神山地、知床の僅か3ヶ所しかないというのは、自然を大切にしてこなかった日本人への痛烈な批判のように思えてならない。富士山をきっかけとして、摩周湖尾瀬ヶ原、黒部・立山阿蘇山西表島などなど、美しい国「日本」を整備していくのが急務だろう。中身のないキャッチフレーズで終わらないためにもね。