はかない

カタクリ

カタクリなどの春植物のことを、「スプリングエフェメラル」という。直訳すると「春のはかない命」ということになる。白金自然教育園では落葉樹林の枯葉に埋もれ、カタクリの花が心細げに、うつむき加減に咲き出していた。去年より半月も早い顔見せだったが、6枚の反り返った淡い紫の花が、時折吹き抜ける風におびえたように揺れていた。春先の陽炎のようにおぼろで、はかなげだ。

春の妖精といわれるカタクリは「スプリング・エフェメラル」。早春の一時、芽を出して花を咲かせ、タネを付け、あっという間に消えて、あとはずっと地下で眠る植物たちの代表みたいな花だ。俯いてひっそりと咲く様から「春のはかな草」ともいわれている。アリに種を運んでもらう「相利共生」植物だ。米粒より少し小さなタネの先に、アリの好物であるエライオソームという物質をつけておき、アリが巣に運ぶ途中で、重いからこの物質だけをかじりとって、タネを放置する習性を利用し、種の保存を果たしている。