ふるさと

向島百花園

小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ 
緑なす はこべは萌えず、若草も しくによしなし
千曲川 いざよふ波の 岸近き宿にのぼりつ 
濁り酒 濁れる呑みて 草枕 しばし慰む。

島崎藤村 小諸川旅情の唄より)


ふるさとは 遠きにありて思ふもの 
異土のかたいとなるとても 
そして 悲しく うたふもの
よしや うらぶれて 
帰るところに あるまじや
ひとり 都のゆふぐれに ふるさと思い 涙ぐむ 
遠きみやこに かへらばや 
遠きみやこに かへらばや。

室生犀星 小景異情より)