出世魚

出世魚といえば、すぐブリが思い浮かぶが、ボラもコハダも負けていないよねえ。ブリはワラサ、イナダ、ハマチときて、トドのつまりはブリ。コハダはシンコ、コハダ、ナガツミときて、トドのつまりはコノシロ。ボラはオボコ、イナ、ボラ、トドときて、とどのつまりとなる。ボラの出世名は漢字で書くと、どれも鯔となるから、いなせという言葉は「鯔背」と書き、とどのつまりも「鯔の詰まり」と書くわけだ。

「いなせ」は江戸時代、魚河岸にいた粋で峡気ある若者がいなの背中に似た形の「鯔背銀杏」に髪を結っていたことに由来する。一方、「とどのつまり」という言い回しだが、ボラは4歳魚になるとトドと名を変え産卵を済ますと、それを一期として生涯を終えることから、「最後には」「結局のところ」なんて意味に使われるようになった。出世魚というのは大きくなるたんびに名前が変わっていくが、その間、川越え海越え苦難の道を泳ぎ抜かなければならない。大きくなればコバンザメが付きまとい、淀みに入れば、たちまちダボハゼどもが集まってきて修羅場にさらされることになる。